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全国大会を開催すべきか中止すべきか、学会の会長として悩んだ1週間。

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情報コミュニケーション学会の会長を拝命し、2回目の全国大会。2020年2月29日~3月1日に長崎大学で開催する予定でした。結論から言えば、現地での通常開催は中止、オンライン配信(試行・一部)となりましたが、決めるまでと決めてからのお話を、今後、誰かの役に立つこともあろうかとまとめることにしました。

今回は、1月末のプロローグから、2/22(土)の中止(第1報)を流すまでです。

 

1月末から2月初め:プロローグ

新型コロナウィルスについては、ぼちぼちニュースには聞いていましたが、まだまだどこか「他人事」。この時、顧問の先生のお一人からは「ぼちぼち考えときやー」と言われていましたので、「ぼちぼち」マスクや除菌シートを買っておりました。

2月10日(月)一般的な対応掲載

他学会と同様に新型コロナウイルス感染症に関する本学会の対応について」を役員に審議していただき、学会サイトに掲出。ザックリいうと、
・今後の状況次第でイベントは中止するかも。

・体調悪い方はイベントはご欠席ください。
・会場では感染予防措置を準備します。
・スタッフはマスクします。
という内容でした。

この時も感染の状況が限られていたため、「九州なら大丈夫だろう」などと思っておりました。

2月15日(土)消耗品の確保

とはいえ、実際に全国大会となるといろいろな準備が必要になります。ということで、まずは会員、参加者の安全を確保するために、実行委員会にマスクや除菌シート、アルコールスプレーの準備をお願いしました。また、何かあった時のために、学生さんのアルバイトはなし、という方向にしました。この時点で、マスクや除菌シートはなんとか確保(最悪、自身のものを出す予定)できたものの、結局アルコールスプレーは最後まで見当たりませんでした。

2月16日(日)検討開始

現地実行委員長と学会事務局長などごく限られたメンバーで、大会中止にした時の課題について考え出しました。

すでに参加費、懇親会費、論文集代はご入金いただいている人もいらっしゃり、論文集は刷り上がりつつあります。学会会場となる教室も、懇親会場となる生協さんももちろん予約していただいています。ご講演の先生や共催団体へのご連絡、出展いただく企業さんへの対応、返金処理、論文集のこれからの販売など、考えれば考えるほどたくさんありました。

*現地実行委員長の大変フレキシブルな対応で、会場代も懇親会についても、この時点で保留していただいていたことが、のちに大変助かることになります。

ちょうど役員の入れ替えの時期でもありましたので、規約を隅から隅までよんで、総会は理事会に代えることができること、理事会は遠隔でも開催可能なことを確認しました。

この日から、規模を縮小してでも開催するか、中止にするか、正直揺れ動く日々が始まります。「開催してしまった方が楽」「何かあった時が大変」「決めるのは自分」「どっちにしてもいろいろな意見がある」をぐるぐるしていました。

他学会の会長や、同日開催される他学会の全国大会の関係者に様子を聞いても、まだどこも「検討していない」とのことで、検討を始めたのは早かったのかもしれません。

2月19日(水)できるなら縮小開催で

この日まで「縮小開催」で検討していました。まだ、大丈夫。そうはいっても大丈夫。そんな気持ちの方が勝っていました。「開催したいという人の方が多いよな、、、」という気持ちもどこかにあったのかもしれません。

しかし、このころには、「検討したほうがよいのでは?」という意見を何人かの役員から頂戴することもありました。検討していることを、役員の皆様方にもっと早めにお知らせすればよかったです。

2月20日(木)中止決定→学会サイトの振込の案内を削除

この日、2つのニュースがありました。一つは福岡県で感染者が発生したこと。もう一つは熊本県で行われる他学会の研究会が中止を決めたこと。直接はどちらも関係がないといえばないのですが、私の心の針が大きく「中止」に傾いた瞬間でした。

次の大きな判断は「やったことにするのか、延期するのか」でした。過去、東日本大震災の時、他学会の全国大会を茨城県で行う予定でしたが、現地の被害が大きく、半年後に弊学(奈良県)で引き受けたということもありました。しかし、今回は年度末。延期してしまえば、年度の研究成果にならなかったり、そもそも所属が変わったり、と難しいことばかり。一昨年の北海道胆振東部地震の時は、これまた別学会の全国大会最終日の早朝で、「最終日は行ったこと」となりました。

今回は、実行委員長らとも相談の上、「やったことにする」ことになりました。そして、「学会としての誠意」として、参加費は返金することに決めました。会場代の予約金がかかっているなど、すでに経費が発生しているために参加費を返金しない事例があることも知っていました。しかし、上記の通り、実行委員長がまだ会場費の支払いを保留していただいていたこともあり、参加費は返金することにしました。

とはいえ、地震や警報など、「起こったことに対して中止」というのはご理解いただいても、「起こるかもしれないことに対して中止」というのは、判断が難しく、意見が分かれるだろうなぁ…という本音もありました。しかし、ここは自分の「中止に傾いた気持ち」を前に出すことにしました。

そして、次は総会のためにも会議をオンラインで開催しなくては…と、お一人の役員の先生に依頼。。。と、「わかりました!」とご快諾いただきました。このご快諾が、のちのオンラインセッションの実施につながるのです。

せっかくの情報関連学会ですので、オンライン配信も考えてみましょうか?という話が出てきたのもちょうどこの頃です。現地実行委員の方々においては、半年以上準備し、時間を費やし、やっと本番という時に「中止」というのは本当に申し訳なく、その中から「オンライン配信」という声がでてきたのはうれしく、実現したい気持ちが湧いてきました。1か月あればもちろん準備ができるとは思ったのですが、この時点でわずか1週間。協力を約束してくださった方もいらっしゃいましたが、その方にももちろん日常の業務はあるわけで、「やれるところだけ」という気持ちでした。


2月21日(金)厚生労働省からの「メッセージ」

役員に審議いただき、明日には会員および参加予定の方にアナウンスできるよう、中止発表文言の作成。ちょうど厚生労働省からも「開催の必要性を改めて検討」「政府として一律の自粛要請を行うものではありません」というメッセージが出され、中止にご納得いただける方も増えるのでは…と思いました。

この日の夜に、配信用の機材も複数見せていただき、いろいろなご提案もいただき、迅速なご協力と確かな技術力に心から感謝しました。

2月22日(土)役員への審議と中止(第1報)のWeb掲載

中止の判断とWeb掲載の文言を役員の皆様方に数時間で審議いただきました。審議の時間を十分に取れず申し訳ありませんでした。緊急ということをご理解いただき、文言の修正のみでお認めいただき、中止(第1報)のWeb掲載。もっと早く判断しておけば…、もっといろいろな方のご意見を伺っておけば…と反省ばかりですが、全国大会まで1週間を切っての表明となりました。

この時点での間違いは、「問い合わせ」を実行委員会のMLにしてしまったことでした。どのような内容の意見や問い合わせが来るかわからない以上、こうした「問い合わせ」は会長である当方に一本化すべきでした。

 

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ここまで、エピローグを含む、会長として判断に至った経緯です。実行委員長はじめいろいろな方にご相談し、ご協力をいただけるという約束をいただき、そのうえで「現地での通常開催の中止」という判断をすることができました。会長として大きなことを決めるというのは初めてのことでしたし、すでに決まっていることにのっとっての判断ではなかったこともあり、難しい状況ではありました。とはいえ、多くの方にご支援、ご賛同いただいたことに深く感謝します。

後半は、日を改めて、準備から「中止になった全国大会」の開催までをまとめたいと思います。