教師不在のハイフレックス型のゼミでは、学生の方がフレックスだった話 #kiorlab
【ポイント】
・対面と遠隔に学習者がいる状況で、遠隔をお客様にしないために、あえて、教授者も遠隔にいくハイフレックス型のゼミをしました。
・対面にいる学習者も遠隔にいる学習者も、そして教授者も基本同じ画面を見ることにより、一体感のようなものが生まれれば、と考えています。
・対面にいる学習者同士は、顔を見ながらコミュニケーションをするので、それに気づいた学生たちが、自分たちのノートPCのリアカメラを使って、「配信」を始めたことがさらにフレックスでした。
【本文】
後期になって対面授業を始めた大学も多いのではないでしょうか。弊学も少しずつ、学生がキャンパスに戻ってきました。一方、本人の考え、家庭の事情などで、登学を希望しない学生も一定数います。そこで、必要なのが、対面にいる学生も、遠隔にいる学生にも授業を提供する方法です。
既にいくつか実践もされており、ここでは大阪大学全学教育推進機構の「ハイフレックス(HyFlex)型授業とは、Hybrid-Flexibleの略で、対面・同期オンライン・非同期オンラインが提供され、学生が自在に選択することができる授業形態」という言葉を使いたいと思います。
また、畿央大学大学院は、13年前より、対面にいる大学院生と遠隔地にいる大学院生を対象に、同時に授業を行っていました。この時から、考えていたことは、遠隔にいる学習者を「お客様」にしない、ということでした。
いまでこそ、遠隔地を接続するシステムのほとんどは、遅延がありませんが、13年前の某システムは、もちろんネットワークそのものの問題もありましたが、こちらの映像が学習者に届くまで30秒程度のラグがありました。一方通行的な講義を配信するだけならそれでも問題ないのですが、何か質問をしたり、反対に学習者から質問があったりしても、「秒差」が生じているので、コミュニケーションがなかなかに難しい状況でした。
当時の実践知として得たことは、
「遠隔にいる人を優先にするぐらいで、ちょうどいい」
です。対面にいる人は、遠隔にいる人を待てますし、対面にいるほかの受講生と話すこともできますが、遠隔にいる人は「一人」なのです。
・今、聞いていいのかな?
・今、質問したら、もう授業は別の話しているだろうから、邪魔になるよね。。。
そんな声を当時の大学院生へのインタビューで聞きました。
さて、あれから10数年。若干落ちたり、固まったりすることはあれども、遠隔でもスムーズにコミュニケーションできるようになりました。今回、当方のゼミをハイフレックス型にしたところ、大学で参加した学生は9名、遠隔で参加した学生は8名とほぼ同数となりました。(注1)
この状況で、「遠隔にいる学習者を『お客様』にしない」ために、当方はあえて別室から遠隔で参加しました。学生が発表するゼミだったので、当方がしゃべるターンはほとんどなかったからという状況でもありました。
画面共有で発表する学生、質疑応答は対面からも遠隔からも受け付け、学生一人一人がイヤフォンマイク持参(事前に連絡)だったこともあり、音声も特に問題なく、ゼミは進みました。(注2)
一つだけ想定外というか、私も遠隔にいて、「あー、私は確かに遠隔にいるんだな」と思ったのは、対面にいる学生同士が質疑応答をするときは、お互いの顔を見るので、横顔が見えて、視線が外れた時です。
それに気づいた発表者が、自ら前に立って、自分のPCのリアカメラで、友達の助けを借りつつ、配信を始めたのは、私もびっくり!文字通り「フレックス」(柔軟)な対応でした。また、発表者がうなずくときに、カメラ(というかPC)も上下に動いたのも、フレックスな対応でした。このカメラワーク、横のアシスタント役を買って出た学生の発想だったそうです!(これらの写真も学生からの提供です)
3年生にとっては初めて、4年生にとっても9か月ぶりの対面のゼミは、いろいろな質問も飛び出し、笑いのあふれるものになりました。とはいえ、まだまだ、遠隔の学習者をお客様にしないために、いろいろ工夫していこうと思います。(注3)
なお、昨年度までのゼミの様子はこちらの記事でまとめていただいています。
【注釈】
1)補足をすると、そもそも遠隔予定だったのですが、ゼミの前の3限と、ゼミの後の5限の授業が「対面」だったため、そもそもゼミをしていたこの教室を開放しました。
2)弊学は、学生一人一人にノートPCを貸与し、officeのアカウントも包括契約しているので、全員が同じ環境で学ぶことができます。
3)ちょっとでも一体感を、と、事前に学生全員に10月分として同じおやつを送っていたのに、、、(以下略・笑)
参考リンク